その症状の意味は?

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(1)「症状」には意味がある

愛犬がかゆがっていたり、痛がっていたりすると、心配でたまらなくなるのは飼い主として当然の心情です。

では、愛犬を苦しめる「かゆみ」や「痛み」という症状は、いったい何なんでしょうか?
単に不快をもたらすだけのものでしょうか?

ここでは、「症状」が出ることの意味について考えてみましょう。
 
 

(2) 免疫細胞の戦い

生き物の体は、地球が誕生してから46億年かけて進化してきただけあり、とてもうまくできています。

特に「自分の細胞が壊されること」、つまり「自分以外のものが体に入ってくる」のを防ぐこと=免疫の仕組みは、知れば知るほどうまくできています。

ワンちゃんも含めて私たち生き物の免疫細胞は、自分の正常な細胞を壊そうとするもの(ウィルスや細菌、ガン細胞などの病原体です)を発見すると、即座に攻撃をしかけて、それらをやっつけようとします。
そうやって戦いが起こると、その場所は熱をもち(免疫細胞は体温が高くなると働きが良くなります)、かゆみや痛みが生じます。
それが「炎症」です。

「炎症」=「免疫細胞の戦い」は、体のいたるところで起っています。
体の表面で起れば、皮膚炎外耳炎となどと診断される病気、ということになるでしょう。
内臓で起れば、肝炎や腎炎や膵炎、ということになりますね。

ここで、よく考えてください。

「炎症」は、「免疫細胞の戦い」です。

体の中に侵入してきた危険な敵を、がんばってやっつけようとしている、という状態が、「炎症」として表れるのです。

なら、その「炎症」を抑えるとどうなるでしょうか?

本当に対処しなくちゃいけないのは、何でしょうか?
 
 

(3) いらないものの排泄

免疫細胞の仕組みも良くできていますが、体には「いらないものを排除する」という仕組みも備わっています。

「いらないもの」とは、細胞が活動することで出る残骸や、アカやフケのような細胞そのものの死骸だったり、吸収したけど使わなかった栄養素だったり・・・
体にとって、あると邪魔になるもの、そして、溜まると体の機能が落ちて病気になりやすくなるもの、です。

毒素 や 老廃物 などとも呼ばれます。

分かりやすい例をあげると、ビタミン剤を飲んだら翌日、まっ黄色のオシッコが出ますね。
あれは、吸収したけど使わなかったビタミン(BやCなど水溶性のビタミン)が、オシッコとして排出されたからです。

「いらないもの」は、だいたいオシッコと一緒に排泄されます。
ワンちゃんはほとんど汗をかきませんが、人間は汗からも排出されます。

オシッコや汗の独特のニオイの素は、細胞がタンパク質を使った時にでる残骸、窒素化合物(アンモニアなど)です。

こう見ていくと、「いらないもの」は「細胞が活動したときに出るゴミ」とも言えます。
体は細胞でできていますから、体中のいたるところでゴミが発生しているということが分かりますね。
この「ゴミ」を、集めて捨てる、という機能が“排泄”です。

人間社会でも「ゴミ」は溜まるといろいろ問題を起こしますね。

体の中も同じです。

溜まると「病気の素」になってしまいます。

だから、体は「いらないもの(ゴミ)は、とにかく捨てよう」とします。

本来なら、リンパ液がゴミを集め(ゴミ収集車)、腎臓や肝臓で処理して(ゴミ処理場)、オシッコで捨てる、というふうに処理されます。

が、この流れのどこかにトラブルがあったり、そもそもゴミの量が多すぎて処理しきれなかったりしたら、どうなるでしょう?

病気になるから「ゴミ」は溜めたくない、でもオシッコから捨てられない・・・!

そんなとき、体はどうするでしょう?

答えは、不法投棄(笑)です。

(笑)って書いていますが、笑い事じゃないです。

涙と一緒に、耳アカと一緒に、毛穴からの分泌物と一緒に、ちょっとずつ「ゴミ」を捨てます。

本来のゴミ捨て場と違うところに捨てられたゴミはどうなるでしょう?

人間社会では、カラスやネズミやゴキブリなんかが集まって、とっても不潔ですよね。

細胞の「ゴミ」にも集まってくるものがあります。
それは、雑菌です。

涙と一緒に出たゴミに雑菌が集まると「涙ヤケ」に。
(あの赤い色は、雑菌の死骸が出す色素です)

耳垢と一緒に出たゴミに雑菌が集まると「外耳炎」に。
(マラセチアが有名ですね)

毛穴や汗腺から出たゴミに雑菌が集まると、痒み(炎症)が起って、そこを舐めて、足先が真っ赤に。

「外耳炎」は、薬で治療しても、何度もぶり返して悩んでいる飼い主さんは多いんじゃないでしょうか。

それは当然です。
耳の中に、マラセチアのごちそうである「ゴミ」がいっぱい捨てられているのですから。

体は、たとえ外耳炎や涙ヤケや皮膚炎になっても、それ以上に「ゴミ」が体の中に溜まることのほうが“悪い”と判断します。

だから、オシッコで捨てられない分は、なんとかしてほかのところから捨てようとします。

これは、自分を守るために必要な反応ですよね。
この反応を止める薬もあります。

では、薬で止められたら捨てなくちゃいけない「ゴミ」はどうなるでしょう?

外耳炎や涙ヤケや皮膚炎を「治す」のは、この反応を止めることでしょうか?

本当に対処しなくちゃいけないのは、「ゴミが捨てられない状況」もしくは「ゴミが多すぎる状況」ではないでしょうか?