自分がやってるのはどっち?

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(1) 主役は細胞。治療は脇役(サポート)。

ここまで読み進めて頂いたら、症状を「消す」ことと「治す」ことの違いは、なんとなく分かっていただけたでしょうか?

基本的に、西洋医学の治療は症状を「消す」ことにスポットが当てられています

血液検査で内臓のどこかの数値が悪い、となれば、処方されるのは、その内臓の働きを補助する薬です。

なんらかの原因で機能が弱った内臓の働きを、薬が肩代わりしてくれます。

例えると、足のケガをしたときに使う車椅子みたいなものですね。

車椅子を使えば動けるようになりますが、これは足のケガが治ったということでしょうか?

・・・違いますよね。

車椅子を使っている間に、足の方はギプスなどをして治るのを待ちます。

ギプスをする、ということは、ケガをした箇所を安静にする、ということです。

最終的に、車椅子を使わずに歩けるようになって初めて「治った」といいますね。

西洋医学の治療は、この車椅子のように、あくまでケガが治るまで本来の機能をサポートしてくれるもの、もしくは、治るまでの症状が生活に負担になるため、症状を軽くしてストレスを減らすものです。

「治す」のは、細胞の修復機能です。

あくまでも細胞が主人公で、外部からの治療はすべて細胞をサポートする脇役です。

脇役にサポートしてもらっている間に、さらに舞台の外では、その症状が起こっている原因はなにか?その原因をもたらしているのはなにか?を探ることができますね。

前の項の例だと、エアコンのカビが症状の原因で、それをもたらしているのはエアコンです。

エアコン清掃をして、カビの量が減って、症状が出る必要がなくなった(=免疫力がカビの力を上回った)時点ではじめて「治った」と言えるでしょう。
 
 

(2) ホメオスタシスはヤジロベエのようなもの

3項で「体には元に戻ろうとする機能(ホメオスタシス)」が備わっているといいましたが、その状態は、ちょうどヤジロベエのようなものです。

ヤジロベエは、少々揺らされたくらいでは、すぐに元の位置に戻ります。

風邪やちょっとした切り傷が、ほうっておいても2・3日で治るのと同じです。

これが、大きく揺らされると、激しく動きますね。

激しく動きますが、最後にはまっすぐに戻ります。

でも、強い風がずーっと吹き荒れていたり、支点(中心)を支える土台がグラグラしていたりしたら、ヤジロベエは元に戻るヒマがありません。

ヤジロベエが揺れているのを、ガシっと掴んで動きを止めてしまうのが、薬での治療です。

あまりに激しく揺れすぎて、なかなか元に戻れない状態になってしまう、もしくは、揺れが激しすぎて、そのままでは倒れてしまいそうな状態なら、いったんガシっと掴んで動きを止めても良いでしょう。

でも、強風や土台のぐらつきなど、ヤジロベエが揺れる原因がそこにまだあるなら、手を放すとまた激しく揺れてしまいます。

動きを止めている間に、ヤジロベエが激しく揺れる原因はなにか、風が吹いているのか、そもそもヤジロベエの両手のバランスが悪いのか、支えている土台が傾いているのか、などを探って改善していけば、小さな揺れに戻すことができるでしょう。

飼い主さん、あなたがやっていることは、ヤジロベエの揺れを掴んで止めることでしょうか?

それとも、ヤジロベエの土台をしっかりしたものに変えたり、吹いている風をブロックしたりして、ヤジロベエが自力で立つために補助することでしょうか?

もし、ヤジロベエが長年がんばって、あちこち傷みが出てきて、もう寿命が近いな、というような場合は、掴んで(薬で)揺れを止めてあげても良いかもしれません。

揺れが激しすぎる場合も、いったん、掴んで(薬で)止めても良いでしょう。

ここで注意しなくちゃいけないことは、気持ちとしてはヤジロベエが自力で元に戻れるようになってほしいと願っているのに、行動がヤジロベエの動きを邪魔してしまうことがある、ということです。

ちょっとした揺れを心配して手を出してしまったり。

風がビュービュー吹いている(病気の素が体内や部屋の中にたくさんいる)から激しくゆれているのに、部品が悪いのかと部品の修理(ご飯やサプリメント)ばかりに注目していたり。

使っているのはハーブやレメディといった代替療法だけど、結局揺れを止めることだけに使っていて、根本的な原因は放置していたり。。。

また、激しく揺れているのを見るのがツライ、苦痛が続くよりは楽にしてあげたい、と納得して薬で動きを止めても、いつしか動きを止めている状態が普通になってしまい、薬をやめるとまた揺れが激しくなったり、状況が悪化して薬が効かなくなったりすると、オロオロしてしまったり。

自分がやっていることは、症状を「消す」ことなのか、「治す」ことなのか。

自分が望んでいることは、症状を「消す」ことなのか、「治す」ことなのか。

そこをハッキリと自覚しておけば、動揺することも心配することもぐっと減ります。

逆に、それが分かっていないと、自分が望んでいることは「治す」ことなのに、やっていることは「症状を消す」こと、という矛盾した状態になってしまい、悩みや心配がつきない、という状態になってしまいます。

(3) アナタが望むのはどちら?

10年以上家族を幸せにしてくれたこのコに、「治る過程の苦痛(熱や炎症)」を味あわせるのは忍びないから、このコの体力が尽きるまで、薬で症状を消してあげたい、という選択はアリでしょう。

それなら、症状が進んで薬が効かなくなり、キツイ薬に変えていかなくてはいけなくなっても、納得できると思います。

(こういう選択をしながら、薬がきつくなることを嘆くのはお門違いだということは、ここまで読んでいただいていたら、お分かり頂けると思います)

望みは「治る」こと。
だけど、「治る」のが遅くなってもいいから、とりあえず今出ている症状を「消して」、いったん苦痛を落ちつかせる。
その間に本当の原因を探って、体が「治れる」状態(=ヤジロベエの揺れが少ない状態)になるように対処する、という選択をするなら、症状が「消えた」状態で満足してしまったら片手落ちです。

飼い主さんご自身がやっていることが、症状を「消す」ためのものなのか、「治す」ためのものなのか、また、飼い主さんご自身は、本当はどちらを望んでいるのか、それによって取るべき手段が変わってきます。

どちらを選択するか、それは飼い主さんが最大限の愛情をもって決断することでしょうから、それはどちらでも良いと思います。

ただ、自分はどうしたいのか(症状を「消したい」のか「治るサポートをしたい」のか)、自分のやっていることはどちらなのか、をしっかり自覚しておかないと、取るべき手段を間違ってしまいます。

自分は愛犬にどうしてあげたいのか、自分が愛犬にやっていることはなにか、を考えるところから、愛犬の健康のマネジメントが始まるのです。